ワットポーは、タイ、バンコクにある格式高い寺院の一つです。特に注目されているのが、寝そべった姿の巨大なブッダ、涅槃仏です。
ワットポーを訪れる人は、涅槃仏が目的で訪問する人が多いですが、見どころはそれだけではありません。今回は、涅槃仏を含むワットポーの見どころと楽しみ方、アクセス方法や見学における注意点などを一気に紹介します。
ワットポーとは
ワットポーはバンコク、プラナコーン地区に位置するバンコク最古の寺院の一つです。敷地内におさめられている涅槃像で有名な寺院であり、バンコク観光スポットの一つとなっています。
写真で見るインパクトが大きな涅槃像がクローズアップされがちなワットポーですが、タイの学問最高峰が集結する、非常に大切な寺院でもあるのです。
ワットポーが建てられた年代はわかっていませんが、アユタヤ時代に建てられたと考えられています。
ワットポーはかなり敷地が広く、その面積は8万平方メートルもあります。そのため、北部と南部の2つのセクションに分かれており、涅槃物があるのは北部にあります。南部エリアには僧房が置かれていて、観光で訪れる場合は北部を散策することになります。
また、ワットポーはタイ古代マッサージの総本山でもあり、敷地内に本格的マッサージが受けられる場所もあります。
ワットポーの歴史
ワットポーがいつ建設されたのか、はっきりしたことは分かっていませんが、アユタヤ時代に建設されたと考えられています。
ラーマ1世によってバンコクが首都に制定される前から存在していたことがわかっています。
バンコク最古の寺院の一つです。
ラーマ1世は1782年、トンブリから対岸のバンコクへ首都を移しましたが、そのときワットポーの隣に王宮を建設しました。
当時荒れ果てていたワットポーの修復を命じたのもラーマ1世です。完成したワットポーはラーマ1世の王室寺院として機能しました。
その後、ラーマ3世の治世になってから大掛かりな修復が行われました。大幅に敷地が拡大され、現在見ることができる主な建物も、このときに建設あるいは再建されています。
ラーマ3世の指示により、寺院内の壁画は学問的な図や碑文で装飾されました。彼はワットポーを公共の学問所としたのです。これにより、ワットポーはタイ初の大学としての役割を果たすようになります。
タイの伝統的マッサージの中心であり、19世紀半ばまでは医学教育センターとして機能していました。今日においても伝統医学の中心であることに変わりありません。
ワットポー最大の見どころ
ワットポーの最大の見どころは、なんといっても涅槃像がある礼拝堂です。全長50m、高さ15mの大きさがあります。
寝そべった姿の釈迦仏ですが、15mの高さは奈良の大仏と同じ高さですので、その規模の大きさが想像できるかもしれません。
横になった釈迦の像は、日本ではあまり見ることが少ないと思います。この姿の像は、釈迦の死(「入滅」といいます)を表しています。
高僧の死などについて「入滅」といういい方をしますが、死により「涅槃」に入ることを指しています。そのため、「涅槃像」と呼ばれるのですね。
同じ仏教徒の多い日本ですが、釈迦の死に対する考え方の相違から、涅槃像はほとんど見ることがありません。
涅槃像は単に、釈迦が寝そべってリラックスしている様子ではなく、神聖な瞬間を描いたものですので、じっくりと参拝しましょう。
涅槃仏の参拝方法を説明しておきます。
履き物を脱いで入場
涅槃仏があるワットポーの礼拝堂は土足禁止となっているので、入り口で履き物を脱いで上がります。入口の横にビニール袋があるので、これに履いていた靴を入れて持ち歩きましょう。
タイ寺院では露出度の高い服装での参拝が禁止されています。肌の露出が大きなファッションをしている人は、ここで羽織ものを借りて着用してから入場します。
寝釈迦像を見学
中に入ったら、さっそくメインの涅槃像を参拝しましょう。
全長50m、高さ15mの規模があるので、ゆっくり歩いてその周りを回ることになります。涅槃像の周りにはたくさんの柱があり、見る角度によって、その表情が変化して見えます。
足の裏
涅槃仏はその表情が見える姿も写真撮影スポットですが、足の裏もしっかりと見学してもらいたいポイントとなっています。
お釈迦様のお足は平べったい偏平足ですが、これは「悟りを開いた者」の兆候なのです。その大きなお足は、長さ5m、幅1.5mもあります。
そしてその足裏に描かれているのが、バラモン教の宇宙観に関連した108点の絵です。
伝統工芸に螺鈿細工という手法があります。
これは貝殻の内側にある美しい真珠層を採取してはめ込む手法のことをいいます。
この螺鈿細工で装飾されたバラモン教の宇宙観は神秘的で、見ていると吸い込まれそうな魅力があります。
煩悩を捨てる鉢
涅槃像の足の裏を観察した後は、背中の方へと歩いていきましょう。その廊下には108個の鉢が置かれています。
仏教において、煩悩は108つあるとされています。そのため、日本のお寺では除夜の鐘は108回つくのです。
ここに置かれた鉢に、タイのお金「サタン」硬貨を入れると煩悩がなくなると信じられています。
サタンは、タイの通貨バーツの下の単位になります。
サタン硬貨はすぐ近くに20バーツで交換できるカウンターがあるので、そこで入手できます。
鉢が並ぶ廊下を過ぎると出口になります。
出てしまう直前、最後に振り返って、釈迦の後ろ姿を拝んでから退出しましょう。
涅槃仏の首下にある枕にもすばらしい装飾があしらわれています。
ワットポーその他の見どころ
ワットポーの敷地は広く、南北に分けられていますが、観光客が訪れるのはその北側の部分がメインとなります。僧房は南側エリアにあるため、北側の観光スポットを楽しんでいる間は僧侶の姿を見かけることはあまりありません。
ワットポーの最大の見どころは涅槃仏ですが、それ以外にも複数の見どころがあります。
ぜひゆっくりと時間を取って、見て回ってもらいたいです。ワットポーの礼拝堂以外の見どころを説明しておきます。
巨大仏塔
ワットポーには大小さまざまな大きさの仏塔があります。中でも大きくて目立つ仏塔が4つありますが、これは歴代の王様をそれぞれ表しています。
中国からもたらされた陶器の破片を埋め込んで装飾された仏塔は、カラフルで美しいです。色によって表現する王様が異なっており、緑色はラーマ1世を、白色が2世、黄色が3世、ブルーが4世を代表しています。
本堂
ワットポーの本堂も見ごたえがあるので、忘れず見学してください。礼拝堂はいつも観光客で賑わっていますが、本堂は落ち着いた雰囲気でゆっくり参拝できます。
本堂はラーマ1世によって建てられました。
外と内の2層の回廊があり、中央にはブロンズ像の本尊と150体の仏像が置かれています。本尊の台座にはラーマ1世の遺骨が納められているそうです。
マッサージ像
ワットポーはタイ古代マッサージの総本山でもありますが、その傍らに不思議なポーズをとるたくさんの石像を見ることができます。
一見、インドヨガのポーズにも見えるかもしれませんが、実はこのポーズはタイの伝統医学の一種、「ルーシーダットン」を表しています。
ルーシーダットンはタイ式ヨガともいわれていますが、2500年前から伝わる伝統的健康法です。これらの石像は、ラーマ3世が一般市民を啓蒙する目的で作られたといわれています。
古式マッサージ体験
ワットポーの境内には本格的タイ古代マッサージが体験できる場所があります。街にあるマッサージよりは金額が高くなりますが、正統派タイマッサージを受けることができます。
タイ古代マッサージの総本山であるワットポーで受けるマッサージは格別です。バンコク観光やワットポー散策の締めくくりとしてプランに組み込んでみてはどうでしょうか。
ワットポーへの行き方
ワットボーは、バンコクのプラナコーン地区にあり、アクセスするのは容易です。北側にはワット・プラケオがあり、近くにはワット・アルンなどの観光地があるので、あわせて回りやすいです。
寺院めぐりが好きな人は、たっぷり時間をかけて散策したいエリアですね。そんなワットポーへの行き方は、いろいろな方法があります。
徒歩
ワットポーはチャオプラヤ川沿いに建っています。安いゲストハウスが建ち並ぶカオサンロード付近からは、歩いて10分ほどで行けます。
歩く場合は、熱中症にならないよう注意して向かってくださいね。タイは日差しも強いので、日焼け対策も重要です。
タクシーで行く
最も便利で楽なのがタクシーで行ってしまう方法です。
例えば、シーロムからは20分以内で行けます。ただし、乗車場所によっては交通状況によって時間がかかることがあります。スクンビットエリアからなら、40分は見ておきたいところです。
タイの市街地を走るタクシーの中には、観光地へは嫌がって行ってくれない運転手もいます。乗る前に、必ず行き先を確認してから乗車するようにしましょう。
流しのタクシーの中には、英語がわからない人も多いので、タイ語で行き先を書いたものを持参するとトラブルを避けることができます。言葉に自信がない人は、宿泊しているホテルで手配してもらうのもおすすめです。
また、配車アプリのGrabを使うのも良い方法です。
Grabであれば事前に行き先を入力すれば、料金がはっきり表示されますので、外国語で目的地を説明する必要がありません。ぼったくりに遭うリスクもほぼないので、土地勘がない場所ではとても安心です。
ただし、時間帯によって料金やつかまりやすさが異なります。通常のメータータクシーよりも高くつくこともありますので、その点は理解したうえで利用しましょう。
地下鉄MRTで行く
2019年に地下鉄MRTが延長され、サナームチャイ駅ができました。これがワットポーの最寄り駅となり、歩いて3分で到着できます。
バンコクの地下鉄MRTは料金が安く、ネットワークも広いので旅行者にも使い勝手がよいです。
渋滞に巻き込まれる心配がないのもうれしい点ですね。
水上バスを利用して行く方法
地下鉄MRTサナームチャイ駅ができるまでは、水上バスで行く観光客も多かったワットポー。現在も水上バスというレトロなアクセス方法は人気があります。
高架鉄道BTSのサパーンタクシン駅近くにあるサトーン船着き場から出ている水上バスに乗ります。20分ほどでワットアルン船着き場に到着するので、そこで下りましょう。次に渡し舟に乗って対岸へ渡ったら、歩いて2分ほどでワットポーに到着します。
乗り換えが必要ですし、夏日はけっこう暑いという欠点がありますが、バンコクの重要な交通機関である水上交通を使って移動すること自体が観光の楽しみだと思います。
またボートの上からチャオプラヤ川沿岸の風景を眺めたり写真を撮ったりもできるので、バンコク旅行中、一度は水上バスに乗ってみてほしいです。
トゥクトゥク
ホテルが集まるエリアや観光スポット付近では、トゥクトゥクがたくさん停まっているので、それを利用してワットポーまで行くこともできます。
ただし、必ず料金交渉を行ってから乗ってください。
ワットポーには複数の入口があるため、下りる場所を間違えるとけっこう歩かされることになります。タイ・ワン通りで降ろしてもらうように伝えておくとよいでしょう。
英語が通じないときのために、目的地をタイ語で書いて運転手に見せるようにするとよいです。
ツアーに参加する
バンコクの観光スポットを効率よくまわるにはツアーに参加するのもおすすめです。ワットポーは、バンコク最古の寺院の一つであり、バンコク3大寺院の一つとなっています。
3大寺院は、ワットポーのほかに、ワットアルン、ワットプラケオの3つをあわせてそう称しています。これら3つの寺院を含めたバンコク市内観光ツアーは、各旅行会社で開催されています。
ツアーであれば、宿泊しているホテルまでの送迎が含まれるプランも多く、日本語ガイドをお願いすることもできます。
なにより、暑いタイの街を歩き回る時間が少ないため、体力に自信がない方や家族連れにとっては非常に便利です。
ワットポーの入場料と営業時間
ワットポーは、タイ人は無料で入れますが、外国人はチケットを購入する必要があります。
外国人の入場料は、2024年1月に値上げされて一人300バーツとなっています。120cm以下の子どもは無料です。
ワットポーの入場時間は午前8時から午後6時半までとなっています。ただし、最大の見どころである涅槃像がある礼拝堂は、午後4時に閉まってしまうので注意してください。
敷地内にあるタイ古代マッサージの営業時間は、午前8時から午後5時までとなっています。
ワットポー観光のベストシーズン
涅槃仏が見どころのワットポーを訪れるのに最適な時期はいつなのでしょうか。
涅槃仏は礼拝堂の中に入っていますし、その他の見どころの本堂も建物の中にあります。そのため、屋外よりも屋内での見どころが比較的多くなるワットポー観光は、それほど天候を気にしなくてもよいかもしれません。
しかし、ワットポーの敷地は広いため、境内を散策する部分も多いです。本堂などの建物や石像を写真撮影するなら、天気が良い方が撮りやすいですよね。
ベストシーズンは乾季
ワットポー観光のベストシーズンとしては、バンコクの乾季である11月~2月の期間がおすすめです。バンコクは一年中温度も湿度も高い都市ですが、乾季と雨季、そして暑季と呼ばれる季節に分かれます。
乾季は文字通り雨が少ない時期ですので、晴天の日が続き、観光にはもってこいです。
街歩きの際にも雨具を持ち歩かなくてすむので身軽に観光できます。
それ以外の時期も観光可能ですが…
乾季が終わって3月~5月になると、暑季と呼ばれる、一年で最も暑い時期になります。この時期に旅行する場合は熱中症対策をしっかり行ってお出かけください。
6月~10月は雨季に相当します。バンコクでは「スコール」と呼ばれる熱帯性の雨が降りますので、外出の際は折りたたみ傘などの雨具を携帯しましょう。
ワットポー観光の注意点
ワットポーは涅槃仏などの写真撮影スポットとして人気が高く、毎日たくさんの旅行者が訪れます。私たち旅行者にとっては観光スポットですが、地元のタイ人の方々にとっては神聖な場所ですので、礼を欠かさないよう、マナーを守って参拝することが大切です。
ワットポー観光における注意点についてまとめておきます。
露出の大きな服装はNG
ワットポーだけでなく、タイ寺院はすべて同じですが、肌の露出が大きな服装での入場はNGです。
キャミソールなどのノースリーブや短パン、ミニスカートなど、肌を見せるファッションでは入場できないので、注意してください。
そうはいってもバンコクは毎日暑いので、街歩きはノースリーブに短パンという姿で行うことが多いでしょう。寺院を訪問する予定なら、あらかじめ羽織るものを持参するのがおすすめですが、持っていない場合は入り口で貸してもらえますので、それを利用してください。
足元に関しては比較的寛容です。
本来、寺院ではサンダルも好ましくないとされることがありますが、ワットポーは観光客が多いということもあり、着脱に便利なサンダルも黙認されています。
ワットポーをじっくり見学するときには何度も靴を脱いだり履いたりするので、着脱しやすい足元で訪問するのが便利です。
女性は僧侶や仏像に触れてはいけない
タイ仏教においては、出家すると結婚できず、女性に触れることはタブーとされます。僧侶が女性に触れることは、それまで積み上げてきたものが水の泡になってしまうことを意味するのです。
そのため、寺院の敷地内だけでなく寺院の外であっても、女性が僧侶に触れることは禁止されています。交通機関で僧侶を見かけても触れたり、隣に座ったりしないようにしましょう。
仏像も同じで、女性が触れることはNGです。ワットポーに置かれている仏像にも指を触れないように気を付けてくださいね。
ただし、寺院に置かれている仏像に金箔を貼って参拝するときは、女性が仏像に触れるのも許されます。
仏像より高い場所に立たない
タイ仏教では、一般の人が仏像よりも高い場所にいることはNGとされています。
寺院内で仏像が置かれている場所では、靴を脱いで座ることが基本になります。
近くで参拝しているタイ人の方を参考にすると良いと思います。
ワットポー入り口での詐欺トラブル
これはワットポー参拝のマナーに関する注意事ではなく、安全な旅行のために気を付けてほしいポイントになります。
ワットポーの入り口付近でトゥクトゥク運転手などを装い、「今日はワットポーは休みだから」と声をかけてくる詐欺師がいると報告されています。
ワットポーは閉まっていると嘘をつき、高額商品を売る店に連れて行って商品を買わせるという手法で詐欺が行われているようです。
ワットポーは、基本的に休日がありません。年中無休で営業しているので、このような詐欺師に惑わされないようにしましょう。
ワットポー周辺の観光スポット
ワットポー周辺にはあわせて回りたい観光スポットが複数あります。特に有名なところで、足を運んでもらいたいのが次の2つの寺院です。
ワットプラケオ(エメラルド寺院)
タイで最も格式の高い寺院の一つで、バンコクに来たらまず訪れたい観光スポットです。ワットポーからは歩いて15分ほどの距離にあります。
エメラルド色のご本尊が納められています。観光のトップスポットとなっており、連日たくさんの旅行者でにぎわっています。入場料も高く混み合っていることが多いのですが、一度は訪れてもらいたい寺院です。
ワットアルン
チャオプラヤ川を挟んで向かい側にあるのがワットアルンです。「暁の寺」と呼ばれており、三島由紀夫の小説にも描かれた寺院です。
夕焼けを背景にしたワットアルンや夜にライトアップされた姿も美しいです。水上バスに乗って移動する場合、チャオプラヤ川の川面から写真撮影するのがおすすめです。ワットポーまで水上交通を使ってアクセスする人は、ワットアルンの撮影も忘れずに。
周辺のレストランも
ワットポーの周りには、最近レストランなどのお店が増えてきています。タイ人の若い世代にも密かに人気が高まっているエリアなのです。
おしゃれな飲食店だけでなく、ギフトショップやタイ式ハーブを扱う店もあります。特にワットポーの西側にあるマハーラット通りから路地に入ったところに、おもしろい店が増加中です。
掘り出し物的なお気に入りショップが見つかるかもしれません。ぜひ、立ち寄ってみてください。
ワットポーを満喫しよう!
ワットポーの見どころや観光の注意点などをまとめてお伝えしました。涅槃仏以外にチェックしたいポイントもたくさんあるので、時間に余裕をもってじっくり見学してくださいね。
周辺にはバンコクの観光名所、ワットプラケオやワットアルンなどもあります。バンコクの寺院めぐりにはとても便利なロケーションでもあります。
バンコク観光のハイライトの一つとして、ぜひ、旅行計画に組み込んでみてください!